ギャンブラーの賭け方としては知らないものがいないほどにメジャーな戦略といえば「マーチンゲール法」である。
マーチンゲール法は、「理論だけなら必ず勝てる賭け方」として知られている戦略的な賭け方で、ギャンブラーだけでなく一部の投資家が「負け」を取り返すために採用してもいる。
「理論上かならず勝てる」のであれば、このマーチンゲール法で賭けないという手はない。だが、戦略はあくまで戦略の域でしかなく、「理論」はどこまでいっても理論であり、ギャンブルに「かならず」は存在しない。
また、「理論上かならず勝てる」マーチンゲール法は、賭け方として致命的な欠点を持ってもいる「破滅型」の戦略でもある。
今回は、そんな危険と隣り合わせの戦略として知られるマーチンゲール法について解説していこう。
マーチンゲール法は負け額の倍額を賭けて負けを取り返す戦略
マーチンゲール法は、「負けた賭けの賭け額を次の賭けで倍額にして賭け続けていき、最終的な勝利でそれまでの負けを取り戻す」という戦略だ。
いわゆる「倍プッシュ」と呼ばれている賭け方が、このマーチンゲール法である。
マーチンゲール法は「理論上は必ず勝てる戦略」と言われているが、実際は負ければ負けるほどに賭け額が増えていくため、負けの総額が雪だるま式に増えていくという観点からは「ハイリスク・ローリターン型の戦略」に分類することができるだろう。
マーチンゲール法で100円を賭けて、10回負け続けてしまった場合の「総負け額」は以下のようになる。
- 賭け額100円(総負け額100円)
- 賭け額200円(総負け額300円)
- 賭け額400円(総負け額700円)
- 賭け額800円(総負け額1500円)
- 賭け額1600円(総負け額3100円)
- 賭け額3200円(総負け額6300円)
- 賭け額6400円(総負け額12700円)
- 賭け額12800円(総負け額25500円)
- 賭け額25600円(総負け額51100円)
- 賭け額51200円(総負け額102300円)
元手の100円が最終的には10万円以上の負けにまで膨れ上がっていくのがこの「マーチンゲール法」の特徴である。
オンカジで実際にマーチンゲール法を採用するとしたら、1回目の賭け額が「100円」ということは少ないので、膨れ上がっていく負け額は、ここで提示したものより莫大なものになることが容易に予測される。
失ってもいいくらいの潤沢な軍資金を持っているプレイヤーならば問題がないかもしれないが、そうではない場合「負けた分は勝ちで取り返す」という認知のゆがみと重なることによって、確実に「借金の原因」になるような危険な戦略だと考えていいだろう。
マーチンゲール法が「理論上はかならず勝てる」と言われる戦略であるのは、単に「負けるまでやめない」だけのことであり、それは「思考停止」でもあるため、そうなると「戦略」と呼べるかどうかも怪しくなる。
マーチンゲール法は「勝つまでやめない」か「勝つのを諦める」の二択しか「やめどき」がない。
もちろん「諦めて途中で降りる」場合は、総負け額がすべて、そのまま負け額としてのしかかってくるだけであることは、言うまでもない。
マーチンゲール法が理論上かならず勝てる戦略になるための前提
マーチンゲール法が「理論上」だけではあれ「必ず勝てる戦略」になるためには、そもそも「勝率が50%である」という前提が必要となる。
そのため、「50%の勝率」で固定されているゲームのほうが少ないオンカジでは、マーチンゲール法は「理論的にはそもそも破綻している賭け方」であると言ってよいだろう。
ルーレットの「赤・黒」であるとか、バカラの一部の賭け方などでのみマーチンゲール法は戦略として辛うじて使用することができるが、スロットでは当然ながら全般的に使えず、またポーカーやブラックジャックなどのゲームでの利用も難しいし厳しいだろう。
いわずもがな、ルーレットの場合でも「赤・黒」以外の賭け方となるとマーチンゲール法は「前提」から崩れてしまうような使い勝手の悪い戦略である。
また、「勝率50%」というのは、あくまで「確率」でしかなく「2回に1回はかならず勝てる」ということを意味していない。実際、マーチンゲール法で賭け続けて、20連敗したというようなケースもあるのが現実である。
「確率」が「かならず勝てる数値」でない以上、マーチンゲール法の「理論上かならず勝てる戦略」という文章は、「理論上でも必ず勝てるとはいいきれない戦略」と書き換えられる必要があるだろう。
マックスベットの設定がマーチンゲール法を制限する
マーチンゲール法という賭け方は、マックスベットが設定されていることによって「負けを取り戻す」という勝ち方が制限されてしまう特徴も持っている。
オンカジでは「マックスベット(最大賭け額)」というものが、オンカジごと、またゲームごとにも設定されている。
このマックスベットを超えた賭けはできないため、「倍額の賭け」がマックスベットを上回ってしまう場合は、「勝って取り戻す」という最終目標を達成できないままに「降りる」以外の選択肢がなくなるのが、マーチンゲール法という戦略の限界でもある。
オンカジのマックスベットは、バカラなどでは平均して「100万円」に設定されていることが多いため、オンカジでマーチンゲール法を採用する場合は「100万円以内の倍プッシュ」までで戦略を活用していく必要がある。
とはいえ、よほどの富豪でもない限り、一回の賭け額が100万円に到達している時点で、すでに「やめどき」のラインは軽く超えてしまっているというのが事実だろう。
マックスベットは「軍資金がすさまじく多い」タイプのプレイヤーが、この「理論上はかならず勝てる戦略」を尽きることのない軍資金を使って遂行した場合の実現率を考えて設定されたものと考えることができる。
マックスベットの設定は、マーチンゲール法の「理論」の側から見ると「制限」となるが、少ない軍資金での賭けが余儀なくされるギャンブラー側から見た場合は、「借金を未然に防ぐための救済措置」と言えなくもないだろう。
マーチンゲール法が向いている2種類のタイプのプレイヤー
マーチンゲール法が「勝つまでやめない」か「勝つのを諦める」の2択しかないことを考えると、マーチンゲール法を採用するのに向いているのは「借金をしてもかまわないプレイヤー」か「自己管理能力が高いプレイヤー」という両極端なタイプに限定されるだろう。
マーチンゲール法は「勝って取り戻す」という戦略であり、この「勝って取り戻す」という考え方は、オンカジに限らず「ギャンブルで借金を抱えるタイプ」のほとんどが持っている考え方である。
マーチンゲール法は、逆に「ギャンブルで破滅をするタイプのプレイヤーの思考法をそのまま戦略にしたもの」といってもいいので、このタイプの破滅型プレイヤーとの親和性が高くなるのは当然である。
一方の「自己管理能力が高いプレイヤー」というのは、軍資金の把握、負けた場合のリスクを考えての「やめどき」の判断がしっかりしているプレイヤーであり、一見するとマーチンゲール法との相性は悪いようにも思われる。
だが、このタイプの「自己管理」ができるプレイヤーは「これ以上マーチンゲール法で賭け続けたらヤバいぞ」という判断がしっかりできるため、「勝って取り戻す」的な思考からくる暴走も避けられる。
そのため、「マーチンゲール法」という危険な戦略とも「適切な距離」で付き合うことができる。場合に応じて「マーチンゲール法」を利用する選択も可能だし、「危ない」と思ったらすぐに総負けを引き受けて戦略的な撤退もできる、というわけだ。
オンカジで実際にマーチンゲール法を試してみた体感
オンカジで実際にマーチンゲール法を採用してベットをしてみた体感としては、「必ず勝てる」ということはまずない、という当たり前すぎる認識であった。
俺は「借金をしてはいけない事情」や「オンカジの利用がバレてはいけない事情」などがあり、「軍資金以上のベットができない」という「家庭環境という外部的な制限」から由来するだけの「軍資金管理能力」があるタイプのプレイヤーである。
そのため、マーチンゲール法を採用したベットでも大体「5回」くらいの負けで、ひと月に使用可能な給料の余剰資金、「軍資金の限界」がすぐに見えてくる結果となった。
マーチンゲール法を採用して遊んでみたゲームはバカラだが、3回目くらいで勝てることもあれば5回連続で負けることもあり、という「勝率50%という確率の真実」を暴くような「ランダムな勝敗」が散発的に繰り返された。
俺の場合は、基本的には「勝つまでやめない」というマーチンゲール法で勝つための選択肢があらかじめ封じられているため、「やめどき」で降りる選択を繰り返したことによって、トータルでは「利益」よりも「総賭け額」が上回ったかたちとなる。
前述したように「思考停止」の戦略でもあるため、「負けるたびに倍額にしていく」という賭け方が極めてドライで虚しいものに感じられたのも、個人的な体感としては追記しておくべきかもしれない。
オンカジを「賭け」のプロセスも込みで楽しみたいのであれば、やはり、一回一回の賭けにしっかり思考を巡らせて、その都度の判断で賭け方や賭け額を変化させていくほうが、よりエキサイティングでありオンカジの醍醐味を味わうことができるだろう。
戦略としてのマーチンゲール法のまとめ
- 勝率50%のゲーム以外ではシステムが破綻している
- 無限の軍資金がない場合は必勝法にはなりえない
- 負けを勝ちで取り戻すという危険な思考が具現化した戦略
賭け方の戦略としてのマーチンゲール法についてのまとめは、以上になるだろう。
「マーチンゲール法だけで賭けていくのは危険であるし退屈でもあるだろう」というのが、俺のマーチンゲール法に対するひとまずの総括ということになるだろうか。
マーチンゲール法は「ちょっと使ってみようかな」という気分になったり、「賭けの流れをちょっと変えてみたい」と考えたときに、気分転換に使ってみるくらいがちょうどいい戦略であり、この戦略を信頼しすぎたり、戦略にのめりこむ賭け方はオススメできない。
マーチンゲール法とは適度な距離感でつきあおう。